歯周病の治療は?その@

これまでのページでは歯周病の原因について主に述べてきました。ここからは具体的な治療について少し話を進めます。

原因がなくなれば病気は治る
 現代医学では,病気というものには何らかの原因があり,その原因を取り除くことによって治ると理解されています。例えば,インフルエンザは「インフルエンザウィルス」が原因であり,そのウィルスを排除することによって症状がなくなり病気が治ります。では歯周病の原因はなんでしょう?そう,口の中に棲んでいる細菌です。原因の除去・・・つまり,口の中にいる歯周病を引き起こす細菌を取り除くことが歯周病の治療となるわけです。
口の中の 歯周病菌をなくそう!しかし・・・
 「菌を取り除けばいいのか。殺菌作用のある薬などを使えばすぐに菌を除去できるのでは??」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。その通りです。実は私たち歯科関係者も同じ事を考えていろいろ試行錯誤しています。よく,歯ブラシや歯磨き粉のコマーシャル等で歯の表面についたプラークを一気に溶解・分解したり,ブラシで取り除くイメージをCGで流しているものを見かけます。もしもあのCG通りにプラークがきれいに取り除けていたら…きっと歯周病で悩まれるかたはいらっしゃらなくなるのではと思います。 あのCGはやはりあくまである程度「イメージ」なんですね。
また,以前にもお書きしましたが,口は外界と接している場所であり,常に菌の侵入があるところです。そもそも人間は細菌と共存しています。ですから口の中から菌をゼロにするというのは,実際には不可能です。つまり,いかに殺菌剤で一旦菌を死滅させたとしても ,日常生活をするかぎり,しばらくすればまた菌は棲みついてしまうのです。

 そして,歯周病の発症地点である歯と歯ぐきの境目や歯と歯の間は 歯周病菌にとってこの上ない居心地のよい場所であるということです。食事をしたとき,食べかすはどこに溜まりやすいでしょうか?ソフトクッキーなど,「歯にくっつきやすいもの」を食べてみてください。クッキーは,どこにたくさん付いているでしょう。おそらく歯と歯の間や歯と歯ぐきの境目付近ではないかと思います(図7)。そして,この場所に付いた食べ物は舌や唇の動きだけではなかなか取り除けませんね。

図7 汚れは歯と歯ぐきの境目,歯と歯の間に溜まりやすい(赤印)

「食べかす」は確かに食べた直後は文字通り「食べかす」なのですが,すぐに菌が繁殖しはじめやがて「歯垢(プラーク)=菌の塊」に変化します。プラーク の付着しやすい場所こそが歯と歯ぐきの境目であったり,歯と歯の間という 歯周病の発症地点なのです。さらに歯周病菌は「嫌気性菌(けんきせいきん)」という酸素をあまり好まない菌です。ポケットと呼ばれる歯と歯ぐきの境目が酸素の届きにくい場所ということも歯周病の進行に一役買っています。
原始的な方法ですが,まずは「歯磨き!」
以上のように歯周病の原因である歯周病菌は常に体の外側(口の中)で 継続的に増殖していることがわかります。つまり歯周病を治すには歯医者さんでの単発的な治療だけではどうにもならないことがおわかり頂けますでしょうか?口の中で絶え間なく増殖する歯周病菌のコントロールができないことにはどんな名医でもお手上げです。
ですから,これまで歯医者さんで歯周病治療を受けたことがある方・・・まず最初に「歯磨き」指導をお受けになった方が多いと思います。 歯周病予防のための歯磨きは,機械的にプラークを取り除き,少しでも菌の繁殖を抑えようとすることが目的です。 とても原始的ではありますがいまのところ毎日増殖する菌を少なくするにはこの方法(機械的除去)がベストと思われます。(毎日歯医者に行って汚れを取ってもらえるならば話は別ですが・・・・)

     
図8 ブラッシング方法を変更した前後の歯ぐき(左:変更前 右:変更後)

 上の二枚の写真(図8)は,歯科医院に来て歯磨き方法を改善して頂き,一ヶ月ほど経過した方のお口の中です。左が指導前,右が一ヶ月後の写真ですが,歯ぐきの腫れが引いているのがわかりますでしょうか?歯ぐきとの境目や,歯と歯の間の汚れを継続して取り除いてもらうだけで,ここまで歯ぐきの状態が改善することもあります。
 このケースは一つの例で,すべての方に当てはまるものではありませんが,歯周病治療の成功・不成功には「歯磨き」が重要な鍵を握っていると思います。歯周病治療成功の影には必ず患者さん自身の努力があります。歯医者さんに任せっきりではなかなかうまくいかないものなのです。

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