金属アレルギーと診断された場合は?

 歯科で使用する金属は実に様々な種類の金属があります。例を挙げますと,白金,金,銀,銅,ニッケル,コバルト,パラジウム,イリジウム,チタンなどです。実はこれら多くの金属にアレルギーの報告があります。しかも一種類単独で使用するケースは少なく,多くは合金といった形で用いられます。では,どうして最初からアレルギー反応の少ない金属を用いないのでしょうか?

 これには様々な問題が絡んできますが,歯を治療する金属はミクロン単位の精度を要求されます。ーこの精度や噛んで壊れない強度を満足させるために最適な金属を用いてきたーということがこれまでの現状だと思われます。また,コストの問題も当然あります。しかし,今後口の中の金属がアレルギーを引き起こすという報告が頻繁にあるようでしたら保険診療に用いられる金属の種類も改変を余儀なくされるでしょう。しかし,現段階ではそのような動きはないわけですから,金属アレルギーに心当たりのある方は ,自衛の策としてぜひ歯の治療前にアレルギーに対する検査をされることをお勧めします。もし,歯の治療前に金属アレルギーがあることがわかっていてアレルギー反応を起こす金属が特定されているならば,その金属を用いないで治療することを歯医者さんに相談されてはいかがかと思います。また,歯の治療をした後に前述のような金属アレルギーと思われる症状が出たという人もパッチテストなどの検査を受け,原因が口の中の金属なのかどうかお調べになることをお勧めします。

 口の中で使用するかぶせや詰め物は,5-10年,あるいはそれ以上の期間常に接している物ですから,できるだけアレルゲンの原因とならないものを用いることが望ましいと思います。最近,材料学の進歩によって金属を用いないかぶせものも開発されてきています。

 前のページで紹介した患者様ですが,口の中の金属を取り除き,アレルゲンでないチタン製の金属を用いて歯を治したところ,掌蹠膿疱症の状態もかなり改善されてきました。

拡大図
治療前


アレルギー反応のあった金属を取り除き,チタン製のものに変更しました

拡大図
治療後1ヶ月

 この分野はまだまだ発展途上ではありますが,例えばその一つとして当歯科医院ではアドバンス社が開発しているキャディムクラウンを導入しています。このシステムはCAD-CAMシステムというかぶせ物の作成過程にも特徴があるのですが,患者さんに提供できる最も大きなメリットとして,バイオセラミックという金属でない材質や,金属の中でもアレルゲンとならないチタンでかぶせものを作ることができるということがあります。

 もしも,このシステムについてさらに詳しいことをお知りになりたいという方はアドバンス社のホームページをご覧いただくか,もしくは当歯科医院に御相談いただければご説明します。他にも多くの研究機関や材料メーカーが生体に少しでも優しい材料を開発しています。

 虫歯や歯周病に比べるとまだまだ認知度の低い口の中の金属アレルギーですが,そのような症状でお困りの方がいらっしゃいましたらお気軽に御相談ください。