どうして虫歯になるのかな


 虫歯についてのお話はどこかでお聞きになったことあるという方がほとんどだと思います。「甘い物を食べると虫歯になる。」「歯みがきをしないと虫歯になる。」等々,そのような話はお聞きになったことはあるのではないでしょうか。 しかし,私たちの歯科医院を訪れる患者様と話していますと,正しく虫歯に関する知識をお持ちの方は思いのほか少ないような気がします。これは,情報を提供する立場にある歯科医師側に問題があるのかもしれません。


虫歯の原因は??

 原因に関しては多くの方がご存じだと思います。通称,「虫歯菌」といわれる細菌が原因です。「甘い物を食べる=虫歯になる」という図式は虫歯の成立を非常に単純化してあるため,虫歯菌の名前が出てきませんが決して甘い物そのものが虫歯を作っているわけではありません。 歯周病のコラムでもでてきましたが,口の中には様々な菌が棲んでいます。虫歯を作る原因菌もその一種です。本名は「ストレプトコッカス ミュータンス」という名前です。ミュータンス菌とよく呼ばれています。この菌は栄養源として砂糖を必要とします。砂糖を栄養源として生活増殖し,代謝物として酸を産生します。そしてこのミュータンス菌が産生する酸によって人の歯は脱灰されてしまいます。 ですから 「甘い物(砂糖)を食べる=ミュータンス菌の代謝が活発になる=ミュータンス菌が酸を産生=歯が脱灰(溶解)される=虫歯になる」となるわけですね。
 では実際の虫歯を写真とレントゲンで見てみましょう。


   
図1 前歯にできた虫歯(矢印部分) 

 図1は比較的わかりやすい前歯にできた虫歯の例です。左側の写真の上の歯,写っている歯すべてに虫歯が出来ているのがおわかりいただけるでしょうか(黄色矢印部分)。すでに歯が溶けてしまって窪みが出来ています。緑丸印の部分は少し色が黒いですね。この歯の裏側を写したのが右側の写真です。隣の歯との接触部分に穴が開いています。これらは虫歯菌が出す酸によって歯が溶けてしまった状態です。


   
 図2 奥歯(噛む面)にできた虫歯(矢印部分)と溝の着色

 図2は奥歯の写真です。噛む面にある溝の部分は虫歯ができやすい場所の一つです。左写真はすでに穴が開いている状態です。右写真は溝が着色していますが,これは虫歯ではありません。このあたりの判断は歯医者さんでないと難しいかもしれません。

   
図3 外から見えない部分にできている虫歯 

 図3は2と同じく奥歯の写真ですが,外から見ただけではとてもわかりにくい場所にできている虫歯です。歯と歯の接触面に虫歯ができています。ここも虫歯好発部位の一つです。レントゲンでは黒い影となって写っています。下の図4では,同じような場所の虫歯を削っていった状態をみています。

 
図4 歯の接触部分にある虫歯(外からは見えないですが削ってみると大きな穴が開いています) 


虫歯を予防するためには?
   よ坊さん


 虫歯も歯周病も菌によって生じる病気です。つまり菌がいなければ病気にならないはずです。しかし,実際に口の中から菌を完全に取り除くことは不可能に近い話です。特に,ミュータンス菌は一度口の中に棲み着いてしまうとなかなか除去が難しい菌として知られています。 皆様は「虫歯予防に歯を磨きましょう!」というキャッチフレーズを聞いたことがありますよね。しかし,一部の歯医者さんがこんなことをおっしゃっています。「歯みがきだけで虫歯は予防できない」・・・これって矛盾した話のようにみえますが。。。。どちらかが間違いなのでしょうか?次回はこのあたりについて考えてみたいと思います。